丁度いい
帰り道。
腕に重い荷物をかけながら、両手で携帯をうっている。
別に何か嬉しいことがあった訳でもないし、辛いことがあった訳でもない。
ただ今日は、朝起きて、学校に行って、バイトに行った。
それだけ。
その帰り道。
音をかけずにイヤホンをつけている。
世界の音がすこし曇っている。
それくらいが丁度いい。
見えすぎると、見なくていいものまで見えてしまう。今すぐコンタクトを外したいくらいだ。
道と信号さえ見えれば家にたどり着ける。
忙しい1日のなかで少しの余裕が欲しくて
母にバイトの終わる時間を聞かれた時、咄嗟に1時間長く嘘をついた。
別に1時間でなにができる訳でもない。
なにをしているわけでもない。
ほら、こうして公園のベンチに座ってブログを書いている。
この公園は沢山猫がいるなぁ。
ゆっくりと歩いて、電車を1本逃して、誰もいない少し大きくて真っ暗な公園を1人で歩いてみる。ゆっくりと。
音のならないイヤホンから、虫の鳴き声やどこかの家から笑い声や、足音だって聞こえる。
何もしない時間。悩み事さえ存在しない時間。
今日は疲れた、友達は元気だろうか、彼は今何をしているのだろう。
気が向いたらそんな事を考えたりする。
自分からぽろぽろと出た感情を聞いてあげる。
自分に構ってあげる。
やりすぎると涙が出てしまうから、自分を慰めるのも面倒だし、1時間くらいがやっぱり丁度いい。
今日のご飯はなんだろう。
そろそろ家に帰ろうか。
明日もとても忙しい。
明日もすごく疲れる。
それでも明日はまあまあ楽しい。
それくらいが丁度いい。
明日は友達と愛でも語ろうか。
明日はとびきり可愛い靴でも履いていこうか。
愛でたし愛でたし